果樹の施肥を考える①－基肥中心は正しいか？－

摘要

農業技術として，施肥は非常に基本的な，そして非常に効果的なものである。しかし，少なくとも日本の果樹栽培で施肥が本格化したのはそう古いことではない。江戸時代に，当時の「紀州ミカン」に対．して－魚葦白や大豆和が施肥されるようになったとされているが，それは特別に熱心な地域の，少数の栽培家によるものであった。その後も，大豆や菜種の油粕，魚粕，人糞尿など，いわば廃棄物が利用されることはあっても，積極的に肥料を購入して果樹に与えることは，明治の初期まで，むしろ稀であったようである。