マイクロエレクトロニクス技術による熟練代替効果－東アジアにおけるME縫製機器の事例

摘要

開発途上国が工業化するに当たって技術が果たす役割は何か。 本稿はこの問題に取り組むことにより，工業化過程の一側面を明らかにしようと試みるものである。 途上国と技術の関係については，「後発性の利益」を主張するガーシェンクロン仮説が有名であろう。 これは，途上国が最も近代的で資本集約的な技術を導入し，そこから便益を得ている現象を指摘したものであり，そうした現象が起こる理由のひとつとして「訓練され信頼に足るような産業労働力が，途上国では最も不足している」［Gerschenkron 1962,9］ことを挙げている。このガーシェンクロン仮説は，一方では現実を正しく指摘していると評価されながらも，他方では途上国の「社会的能力」の重要性を無視しているとの批判も多い［末廣2000；南2002等］。