養液栽培による薬用植物の生産（第6報）液面上下法により栽培したトウキ（Angelica acutiloba Kitagawa）の栽植密度が生育と収量に及ぼす影響

摘要

トウキの養液栽培について，著者らは先に砂耕における生育経過を明らかにし，薬効の指標成分であるリグスチライドは土耕と同等に含まれていること，培地を使用した液面上下法（Ebb＆Flow法，以下E＆Fと略記）が適した毒液栽培法であること，培地としては保水性および透水性の優れた鹿沼土が好適な培地であることを明らかにした．実用的な生産法として養液栽培法の確立をはかるには，現行の露地栽培より生産性を高めること，最終的には生産コストを低減出来ることを明らかにする必要がある．栽植密度は養液栽培装置の使用回転率と共に生産コストに大きな影響を及ぼす．露地栽培の場合，慣行的栽植密度は畝幅50から60 cm，株間20から25 cmとされ，この栽植密度を2倍にしても収量は約17％しか増加しないと報告されている．これに対して，水分，肥料分の吸収について株間に競合の少ないE＆Fにおいて，トウキの生育と根部収量が栽植密度によってどのような影響を受けるかを明らかにするため本試験をおこなった．