遺伝子組換え検査のための豆腐、豆乳からの簡便迅速なDNA抽出法

摘要

植物分子生物学の発展によってこれまでにさまざまな新形質を持つ植物が遺伝子組換え法によって作られ，それらの一部は商業栽培に供されてきた．それらの遺伝子組換え（GM）植物は，農業生産の安定化，省農薬および農業労働の軽減等を可能にし，食料生産に大きく寄与している（立川2005）．しかし一方で，GM作物の食品としての安全性や環境影響に対する懸念を示す消費者等もおり，我が国ではGM作物の商業栽培はこれまで行われていない．消費者のGM作物由来の食品に対する忌避感の背景にほ，GM技術に対する不十分な理解に加えて食品安全性の管理に対する不信感すなわちリスクコミュミケーションの不足がある（小林、草深2005）．これを払拭するための行政の取組みとして，GM作物由来の材料を含む食品への表示の徹底のための法改正（農林水産省2002）やダイズ加工食品の大規模検査（農林水産省2005）等が行われてきた．これらの努力によって消費者によるGMおよび非GM食品の選択が保証されることは，食用作物の分子育種に関する研究開発の促進およびGM作物の普及にとって重要なことである．一方，輸入作物を原材料として食品を製造する加工業者にとっては，GM作物が非GM作物に混入することに対する懸念が高まる状況にある．意図せざる混入によって基準値以上のGM作物由来の材料を含む食品が市場に出回る事態になれば，食品安全性管理に対する信頼も失われ、GM作物の普及を非常に困難なものにすると懸念される．これを防ぐためにほ，行政による検査だけではなく，加工業者やその団体による自主的な検査が重要と考えられる．