脳のコレステロール代謝と神経変性疾患——コレステロール酸化物（才キシステロール)が脳機能制御に関与

摘要

脳は血液脳関門で隔てられているため，独立したコレステロール代謝機構をもっている。この機構の維持にコレステ ロールの酸ィ匕物（ォキシステロール）が重要な働きを担っている。一方で，ォキシステロ一ルは細胞死を誘導し，ァ ルツハイマー病などの神経変性疾患の発症に関与している可能性がある。成人の脳の重さはおおよそ1，400グ ラムで体重の約2%に相当する。とこ ろ力;'，脳は身体のコレステロールの 25%を占めている。神経細胞の軸索 を取り巻くミエリン鞘など，膜構造に 富hでいること力《脳にコレステロール が豊富に存在する理由とされている。 脳内のコレステロールの値は，血中コ レステロール値の影響を受けないこと が知られている。それは，脳にさまざ まな物質を供給するために分布してい る毛細血管が特殊な構造をしており， 血液中のコレステロールを脳内に送り 出すことができないからである。この 特殊な血管構造は血液脳関門とよばれ ている。それでは，脳に存在する豊富 なコレステロールはどこから供給され