炎症性腸疾患と腸内細菌の 関わり

摘要

ヒ卜の腸管内には無数の細菌が腸内細菌叢を形成して おり，宿主の免疫系に多大な影響を与えている。これ までの研究で，炎症性腸疾患は遣伝的素因，免疫学的 機序の異常とともに腸内細菌を含hだ環境因子が関連した多因子疾患であることが示唆されている。近年， 次世代シーケンサーを用いた腸内細菌の解析により，炎症性腸疾患と腸内細菌叢の乱れ，すなわちdysbiosis が関連していることが明らかになつてきた。dysbiosis が腸炎を惹起することが示唼されており，また特定の 細菌が腸炎の惹起,制御に関与していることも明らか となってきた。これらの知見から腸内細菌に着目し働 きかけることで腸炎を改善させる治療に期待が集まつ てきている。近年，dysbiosisを強力に是正する治療と して糞便微生物移植が注目されており，炎症性腸疾患の 新たな治療として世界中で臨床試験が開始されている。