電波がどこまで届くかを知るためのコモン·センス：電波伝搬の基礎知識

摘要

送信アンテナ直近の電波は，周囲に広がりながら伝搬します．送信アンテナから十分離れた位置における電波の電界と磁界は，受信アンテナの大きさに対して一様に分布していると考えられます．また，電界と磁界の比を「電波インピーダンス」または「波動インピーダンス」といい，その値は一定です．このような波を「平面波」といいます．電波伝搬における受信電力等の計算には，電波を平面波として扱います．一方，波長に比べて十分小さなアンテナ，例えば微小ダイポール·アンテナまたは微小ループ·アンテナを電波発生源としたときに，そのごく近傍では電界または磁界が支配的になります．別ないい方をすれば電波インピーダンスが高く（電界が支配的）または低く（磁界が支配的）なるともいえます．図1のように電波発生源からある距離以上離れると，平面波として考えることができ，その距離は波長をλで表すとλ/(2π)になります．例えば，2.4GHz帯の波長は約12cmですから，約2cmになります．この距離以下を「近傍界」といい，近傍界より遠い位置を「遠方界」といいます．実際に使用するマイクロ波帯のアンテナの多くは1/2λ程度，またはそれ以上の大きさがあるので，アンテナから数波長以上離れた位置を遠方界（平面波）と考えるのが一般的です．