ラスマルテンサイト組織の引張変形にともなうひずみ分布の測定

摘要

近年、材料の軽量化の観点から高強度鋼の需要が高まってきている。その高強度鋼の中でも特に実用 化を期待されているのがマルテンサイト鋼である。マルテンサイト鋼の実用化のためには、延性の向上 が課題となっており、これまでに多くの延性向上に向けた試みが成されてきた。中でもマルテンサイト 鋼と高延性鋼を層状に重ねた複層鋼鈑を用いた研究では、引張変形において単体では5%程度の伸びの マルテンサイト鋼が、複層鋼鈑中では50%を超える伸びを示すことが報告された1) 2)。この複層鋼鈑を 用いて、単体の破断伸びをはるかに越える50%まで変形する過程のその場観察が行われた。その場観察 から、単体の破断伸びを越えた低ひずみ領域で、ラス方向に沿ったすべり線の発生が確認された。本研 究では、金粒子の変位測定をもちいて発生したひずみを定量的に評価することで、マルテンサイト組織 の変形を各ひずみ段階において詳細に検討することを目的とする。