高齢者脊髄くも膜下麻酔における術前搭質液輸液の循環動態および血中ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド濃度に及ぼす影響

摘要

高齢者の脊髄くも膜下麻酔(以下,脊麻)における膠質液術前輸液が,脊麻後の循環および血中ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide : ANP)濃度に及ぼす影響を検討した.中等量(8ml kg~(-1))の術前膠質液輸液は,血中ANP濃度を有意に上昇させ,脊麻時における心臓前負荷増加が示唆されたが,低血圧の発生は予防しえなかった.近年,高齢者が脊髄くも膜下麻酔(以下,脊麻)を受ける機会が増加している.高齢者は若年者に比べ,脊麻による低血圧が発生しやすいうえ,低血圧から種々の合併症が併発するリスクが高いといわれているが,脊麻後低血圧予防のための術前輸液負荷の有効性については異論が多い.一方,輸液負荷は心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuvetic peptide : ANP)などの内分泌反応に影響を及ぼし,ひいては循環動態の変動にも関与する可能性が考えられるが,それに関する報告は少ない.