シェル要素による純曲げ変形のスプリングバック解析とその精度評価－不つり合い力補正手法を導入した静的陽解法FEMによる板材成形のスプリングバック解析 第1報

摘要

金属薄板のプレス加工現場において，成形後の弾性回復によるスプリングバックの高精度予測は金型等の設計に不可欠なものである．特に近年，車体の軽量化を目的として，スプリングバック量の大きなアルミニウム合金板や高張力鋼板のような材料が自動車業界等で使われるようになり，高精度にスプリングバックを予測できる手法が切望されている．現在では，コンピュータ技術の発展に伴い，有限要素法(FEM)解析が成形性の事前評価に使われるようになっている．特に，成形不良である，しわや割れのFEM解析による事前評価は，すでに実用段階と言える．しかしながら，スプリングバック量の予測については，これまでに多くの研究がなされてきたが，高精度にかつ安定して解が得られる手法が未だ確立されていない．そこで本研究では，静的陽解法プログラムITAS3Dを対象として，反復解法を用いることなく，不つり合い力を補正する新たなアルゴリズムを提案する．そして，本アルゴリズムの有効性を確認するため，純曲げ変形解析を行い，スプリングバック解析の精度評価を行った．その結果，本手法により不つり合い力および不つり合いモーメントの発生を抑えることが可能となり，素板の変形形状ならびにスプリングバック量の精度向上が得られることが確認された．