ダイヤモンドライクカーボン膜の生体材料としての応用

摘要

最先端医療機器であるCT診断装置や超音波診察装置は、高度の最新電子工業技術に支えられている。 いっぽう、生体材料は医学、薬学、工学等の融合技術によって開発が進み、医療技術の進歩を飛躍的に向上させている。 しかしながら、現在使用されている金属、￣セラミックス、高分子などの生体材料は、生体適合性や機能性などの複合的な機能を同時に満たしていない。この状態で生体に用いると、アレルギーや炎症反応が現れる。 このように、生体の反応性と機能性の要求に合敦する複合的な特性を併せ持つ材料は希少であることから、それぞれの特性が不十分でありながらも限定的に利用されているのが実情である。 また、日本の三大死亡原因である心疾患および脳血管疾患は、血液の凝固（血栓）に由来する場合が多く、生体材料の選択性を制限する問題となっている。 つまり、人工的な材料に血液が接触すると材料表面に血栓としての血液の塊が発生し、血流障害により生体の維持に支障をきたす。 さらに、血栓が付着した材料表面から脱離して頭や心臓の血管内へ移動し、血管が閉塞すると生死を左右する極めて危険な状態を誘発する。 このため、血液と接触する材料には、血栓形成を阻止する薬品の血液中への投与や材料表面へあらかじめ塗布されている。 しかしながら、長期間血液と接触する部位に使用する場合には、塗布した薬品が血液中へ溶け出して消耗することから、薬剤フリーで血栓の発生を阻止する材料の開発が望まれている。