神経変性疾患と小胞体ストレス

摘要

近年わが国は超高齢化社会を迎え，脳神経疾患に羅患する人の割合が急速に高まっている．このため脳神経疾患の治療法の確立は急務であるが，ほとhどの疾患の発症機構はいまだ解明されていない．AIzheimer病，Parkinson病，ポリグルタミン病といった神経変性疾患は疾患ごとに特有の障害部位と症状を示す．一方，多くの神経変性疾患に共通する病理像として，異常蛋白質の蓄積·凝集が認められる．最乱これら神経変性疾患の発症にかかわる重要なファクターとして，小胞体ストレスが注目されるようになってきた．さらに，小胞体は単に分泌蛋白質·膜蛋白質の合成·成熟にかかわる細胞内小器官であるば力りノか，いろいろなストレスを細胞内のシグナルに変換する場であることが明らかになってきた．すなわち，細胞に過度のストレス（たとえば異常蛋白質の蓄積）が加わると，小胞体ストレスが励起され，最終的に細胞死が引き起こされる．本稿ではこのような小胞体ストレスと神経変性疾患の発症の関係について，最近の知見を概説する．