重症熱傷に対する治療戦略：早期手術とスキンバンクの役割

摘要

近年，重症熱傷患者に対する治療法が劇的に変化した結果，従来では救命することが困難であつた広範囲熱傷患者の救命も可能になってきた.救急o集中治療の進歩に伴い，急性期における熱傷ショック期の死亡率は著しく改善したが，その後の感染期での感染症を起因とする死亡率は依然として高率であるのが大きな問題であった.これに対して，受傷後可及的早期に感染源となる焼痂組織(熱壊死組織）を切除する(超)早期手術の導入と，焼痂切除を行つた部位への創閉鎖に凍結保存された同種皮膚の移植が可能となったことにより，重症熱傷患者の救命率が著しく向上してきた，この死体皮膚を保存o供給する組織として，2009年に一般社団法人日本スキンバンクネットワーク(JSBN)が設立され，全国の熱傷施設で適宜必要に応じて同種皮膚移植が可能となり，重症熱傷患者の治療成績の向上に多大な貢献をなしている.