拒絶反応の病理と組織診断－移植臓器における生検診断の意義－

摘要

移植臓器には多種多様な病態が生じるが，拒絶反応が中心的役割を果たしている，拒絶反応は，液性，急性，慢性に分類される．液性拒絶反応は既存抗体による反応であり,フィブリン血栓や出血性壊死により機能が廃絶する.急性拒絶反応はリンパ球浸潤と移植動脈炎により特徴づけられ，実質細胞はアポトーシスにより排斥される．多くは可逆性である．慢性拒絶反応は主として免疫学的機序により生じる血管-間質系病変で，線維化と実質細胞の脱落，動脈内腔の狭小化により特徴づけられる不可逆的な臨床病理学的病態であって，長期生着を妨げる最大の要因である．拒絶反応の生検診断基準は，移植臓器の生物学的あるいは解剖学的特性から各臓器ごとに設定されている．移植臓器生積は拒絶反応の診断のみならず，虚血再灌流障害，感染症，薬剤傷害，原病再発など，鑑別診断にも有用な情報を提供する．臨床医との密な連携より病態を正確に把握することが重要である．