腋窩リンパ上皮嚢胞に発生した扁平上皮癌の1例

摘要

リンパ上皮嚢胞は病理学的に扁平上皮または腺上皮の周囲に胚中心を伴うリンパ組織を持つまれな病因不明の嚢胞であり，頸部に発生する側頸嚢胞や鯉性嚢胞が代表的疾患で，まれに膵や消化管にも発生する．今回われわれは，腋窩に発生した癌化を伴うリンパ上皮嚢胞の1例を経験したので報告する．患者：78歳，男性.主訴：腋窩腫瘤.家族歴：特記するものなし．既往歴：75歳時に脳梗塞．現病歴：約4年前に右腋窩に母指頭大の腫瘤があることに気づいたが放置していた．しだいに増大したため近医を受診し，精査目的で当院に紹介された．入院時現症：体格，栄養は中等度．体温36．1°C，脈拍78，整．結膜に貧血，黄疸はなかった．右腋窩皮下に径10cm大の境界明瞭，表面平滑，可動性良好な軟らかい腫瘤を認めた．その他，表在リンパ節の腫脹はなく，胸腹部に理学的異常所見はなかった．