上腕二頭筋と上腕三頭筋に交叉過誤神経支配を生じた分娩麻痺症例に対する肋間神経移行術を用いた肘屈曲機能再建

摘要

分娩麻痺は，分娩時に腕神経叢に牽引力が加わり生じる神経損傷である.その発生率は報告によりまちまちであるが， Foadらは全米で大規模な調査を行い，1997年には1,000出生あたり1.7人であった発生率が，2003 年には1.3人へと有意に減少したと報告している2).その一方で発生頻度が増大したとの報告3)もあり，少なくとも今後も消滅することはないと推測される.ほとhどの分娩麻痺患者においては有用なレベルにまで回復が期待できるが，なかには神経麻痺の遺残する症例も存在する.