自動車用高強度鋼板の溶接継手の疲労特性におよぼす溶接法の影響

摘要

自動車用高強度鋼板の溶接継手の疲労強度におよぼす溶接法の影響を明らかにするために，微細なフェライト結晶粒と析出物で高強度化した熱延鋼板を供試材料とし，レーザ溶接,プラズマ溶接およびマグ溶接によって作製した突合せ溶接継手試験片の引張疲労試験をおこなった。 得られた結果を以下に要約する。 （1）応力繰返し回数が10~4回を超える高サイクル疲労では,3種類の溶接法のなかでレーザ溶接継手の疲労強度が最も高い。 時間強度でみると，マグ溶接継手よりも150～200MPa高く,プラズマ溶接継手よりも50～60MPa高くなっている。 （2）余盛の平滑化により、レーザ溶接継手の疲労強度は母材の疲労強度近くまで上昇する。 レーザ溶接継手のHAZ軟化城は，プラズマ溶接継手·マグ溶接継手よりもその幅が格段に小さいため，疲労強度および引張強度におよぼす影響はない。 一方，余感形状が小さいしハーザ溶接継手でも，疲労強度低下に対する余盛止端部の応力集中の影響は大きい。 したがって,レーザ溶接継手の疲労強度をさらに向上させるために，応力集中が小さい余盛形状となる溶接施工条件の検討が望まれる。 （3）プラズマ溶接継手およびマグ溶接継手では，余盛を平滑化して余盛止端部の応力集中を排除しても，疲労強度は母材に比べて低くなる。 疲労強度が高くならない原因として，大入熱溶接によるHAZの軟化が考えられる。