直腸癌術後にリンパ節転移を伴う孤立性小腸転移を来した1例

摘要

症例は63歳，男性。60歳時に直腸S状部癌に対し，腹腔鏡補助下前方切除術(D3)を施行した。進行度はT3N0M0, Stage IIであり，補助化学療法は行わず経過観察としていた。術後2年9か月gに貧血，腫瘍マーカ一の上昇を認め，CT, PET-CTによる精査にて直腸癌術後腹腔内再発が疑われたため，リンパ節郭清を伴う空腸部分切除術を施行した。病理組織 学的所見では腫瘍の主座は槳膜下層にあり，粘膜内には明らかな小腸固有の癌成分は認めなかった。免疫染色ではCK20陽 性，CK7は陰性であった。以上より，直腸癌術後孤立性小腸転移（脈管性転移）と診断した。また，郭清したリンパ節に転 移を認めた。直腸癌の小腸転移はまれな病態であるが，転移巣周囲のリンパ節にも転移を来す可能性があることも念頭に置 き，小腸転移巣切除の際には周囲のリンパ節郭清も考慮すべきである。