動注化学療法の限界

摘要

1970年代Satoらが浅側頭動脈法による上顎癌5-FU動注併用放射線治療成績を報告した後,動注の第一次ブームとなった。 しかし,本法による動注化学療法は他の頭頸部癌では期待された治療成績が得られず徐々に姿を消していった。 一方, 1994年にRobbinsらが頭頸部進行癌に対する臓器温存治療として,シスプラチンを150mg/m~2を4コース,経動脈的に投与する放射線化学療法同時併用療法を発表した。 のちにRADPLATと呼ばれるこの治療法は,目覚しい局所制御率で世界を席巻し,今日までに施設ごとにいろいろと修飾が加えられながらも,頭頸部癌治療の一選択肢として認知されつつある。 日本でも10年以上の治療経験を持つ施設からの報告が増えるにつれ,動注のメリットデメリット,さらには,現時点における限界も明らかになりつつある(表1)。 本稿では近年の動注化学療法治療成績から見えてきた動注化学療法の現状と今後の展望について論説する。