(S255)Fe-Si-Ni 3 元系極低炭素鋼におけるBDT 挙動と転位運動の関係

摘要

bcc 構造を持つフェライト鋼は，変形温度が低温から高温になるにつれ破壊形態が脆性的から延性的になる，いわゆる脆性-延性遷移（Brittle-to-Ductile Transition :BDT）挙動を示す．このBDT 挙動は添加元素によって影響を受けることが知られており，Gerberich らはFig.1 に示す様にFe のBDT 温度がSi 添加により上昇，Ni添加により低下することを報告している(1)．ところで，このBDT 挙動は転位の移動律速であると考えられており，BDT 温度と転位の易動度とは密接に関係している．我々はこれまでの研究で， Si と同様な力学特性を示すAl を用いて，非熱的応力の増加量がAlとNi で大きく異なる事を明らかにし，この違いが低温での転位の易動度に影響を与え，BDT 挙動に違いを生じさせることを明らかにした(2) ．そのような中，本研究では，BDT温度を上昇させるSi と，BDT 温度を低下させるNi を同時に添加することでBDT 挙動がどの様に変化するのかを明らかにした．