(S258)鋼／化合物界面から生成したアシキュラーフェライトの変態挙動についての検討

摘要

鉄鋼材料の溶接熱影響部(HAZ)の組織の粗大化に対して，鋼中の介在物を核とする粒内フェライト(IGF) による組織微細化が検討され適用されてきた．IGF 生成に寄与する因子としてフェライト (α) ／化合物間の格子整合性が挙げられ，特にTiN などのB1 型化合物はαとBaker-Nutting の関係 (B-N 関係，{100}_(B1)// {100}_(bcc)かつ<100>_(B1)//<110>_(bcc)) と呼ばれる良好な格子整合性を持ち，比較的高温域で拡散変態により生じるポリゴナルフェライト (PF) の生成に寄与していると考えられている．一方，比較的低温で生成するアシキュラーフェライト (AF) は，母相オーステナイト (γ) とKurdjumov-Sachs の関係 (K-S 関係，(111)_γ//(110)_αかつ[1-10]_γ//[1-11]_α) と呼ばれる方位関係を持つことが知られているが，AF／化合物間の結晶方位関係の寄与については検討されているものの十分な理解には至っていない．そこで本研究では，B1 型化合物の単結晶を鋼中に埋め込み，鋼／化合物のモデル界面を作製し，比較的低温での化合物からのAF 生成におけるα/化合物間の結晶方位関係の寄与について，変態の駆動力や保持時間，化合物の組成を変えて検討した．