(T007_1)組織傾斜化による準安定オーステナイト系ステンレスSUS304 鋼板の水素脆化の抑制とその設計指針

摘要

オーステナイト(γ)系ステンレス鋼の一種であるSUS316L(Fe-18Cr-8Ni-2.5Mo 合金)は、強加工を施してもfcc 構造のγ 相が安定であり、bcc 構造の他鋼種と比較して鋼中での水素の拡散速度が非常に遅い。そのため、環境からの 水素の侵入によって引き起こされる水素脆化に対してより鈍感であるという特徴を有する。しかし、Ni、Mo 等の合金元素 を多量に含むため高価であり、しかも一般構造用鋼と比較して強度は必ずしも高くはない。一方、同じγ 系ステンレス鋼で あるSUS304 の場合、SUS316L よりも安価であるうえにγ 相の安定度が低いため冷間加工を施すことで加工誘起 マルテンサイト(α')が生成し、高強度を達成することが可能である.