その場処理を利用したXPS 分析による鉄基合金の初期酸化挙動解析

摘要

金属材料は、大気中の酸素原子が金属原子と化学結合をつくることによって、その表面にナノメートルオーダーの酸化物層を自然形成する。この表面酸化物層では、構成元素の酸化されやすさの差異によって特定元素の表面濃縮が容易に起こり、このことが、金属材料の耐食性などを支配する。それ故、金属表面の初期酸化挙動を解析することは、金属材料表面における化学反応性解明の点において極めて重要である。金属の表面は、僅かな時間であっても大気に晒すと、速やかに酸化が進行するため、初期酸化挙動を解析するためには、酸化物層を持たない清浄な金属表面の準備、表面の酸化および表面分析という一連の操作を、大気に晒すことなく全て高真空中でおこなうことができる解析システムを構築する必要性がある。本研究では、X 線光電子分光装置（XPS）に、高真空中破断および表面酸化の機能を付加し、これら一連の操作を大気に晒すことなくおこない、鉄基合金表面における自然酸化物層の成長過程を追跡した。