一過性骨髄異常増殖症永田泰之,竹下明裕

摘要

Down症候群は21番染色体のトリソミ一が 原因で，特異な顔貌，成長発達障害，多発奇形 などが認められる疾患である.小児白血病を 比較的高率に合併し，その発症頻度は非Down 症候群の約20倍とされる.そのほとんどは， 一般的にはまれな急性巨核芽球性白血病(acute megakaryoblastic leukemia: AMKL;とされる1). 白血病でみられる幼若細胞を芽球様細胞あるい は単に芽球と呼ぶが，Down症候群では新生児 期にAMKLでみられるのと同様の芽球が一過 性に増殖することがある.多くは数週間から3 力月の経過で自然に改善することから，従来は 巨核芽球性類白血病反応と考えられてきた.し かし，その20-30%の症例は1-3年後にAMKL を発症することから，現在では前白血病状態と も考えられている.国際的には，一過性骨髄 異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis ： TAM)または一過性骨髄増殖症(transient myeloproliferative disorder: TMD),一過性白血病 (transient leukemia: TL)と呼ばれることがある が,2008年に改訂されたWorld Health Organization (WHO) 分類第4版2)では，TAMの呼称が 採用されている.