メタボリックシンドロームにおける食事療法の基本的な考え方とその実際

摘要

近年，食生活や日常生活の変化に伴う運動不足など，ライフスタイルの急速な変化によって， 糖尿病，高血圧，脂質異常症，動脈硬化などいわゆる生活習慣病と呼ばれる疾患が増加している.これらはすべてメタボリックシンドロームを構成する病態であり，その根幹は内臓脂肪蓄積にある.運動療法とならび，適切な食事療法による内臓脂肪蓄積の是正はメタボリックシンドローム治療の基本となるものである.現在我が国の成人の1日摂取エネルギー量は約2,000キロカロリーで，これは昭和30年代からほとんど変化していない.その内訳をみると, 炭水化物摂取量は年々減少傾向にあり，一方でタンパク質は渐增，脂質は約3倍に増加している.この食事内容の変化がメタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病の一因となつており，適切な食事指導は重要な治療手技の一つとなっている.