悪性胸膜中皮腫(びまん性悪性胸膜中皮腫)

摘要

悪性胸膜中皮腫は，胸腔内面を覆う一層の中皮細胞に発生する難治性の悪性腫瘍であり，石綿(アスペスト)吸入が発生に極めて密接に開係している.先進諸国は20世紀後半に大量のァスベストを消費し，40年の極めて長いァスべスト発癌の潜伏期間が過ぎようとする現在，中皮腫は世界的に急増している.胸膜以外に，腹膜，心膜，および，極めてまれに腹膜鞘状突起の遺残である精巣鞘膜に発生するが，胸膜が最も多く（80-85 %),次が腹膜であり(10-15 %)， 心膜および精巣鞘膜からの究生は少ない.中皮腫はまれといわれるが呼吸器悪性腫瘍では肺癌に次ぐ死亡数があり，我が国では2006年に1，000人を超えている.かって悲観的であった中皮腫化学療法は，新規葉酸拮抗薬とcisplatin (CDDP)との併用で生存期間が有意に延長することが示され，早期例には胸膜肺全摘術(EPP) を含む集学的治療が行われている.