睡眠不足症候群とQOL

摘要

わが国では国民の睡眠時間は短縮し，慢性的な睡眠不足状態を呈している人が少なくなし、.睡眠不足症候群(ISS)とは，慢性的な睡眠不足が原因で3力月以上深刻な眠気が持続する疾患である.今回の検討でも夜間の睡眠不足の代償として昼間の過眠やQOLの低下を認め，また，感情面において抑うつや活力の低下もみられた.生活指導を行い，睡眠時間を延長することによって過眠は軽減し，QOLとともに抑うつ，活力の低下の改善も認められた.これらの結果は，不眠の改善が抑うつの予防になりうる可能性も示唆した.ところで， ISSの治療においては，まず過眠や抑うつ，QOLの低下などの症状が睡眠不足から生じていることを患者本人が自覚することが重要である.また，睡眠不足の解消は1-2日の十分な睡眠では足りず，すくなくとも2-4週間の期間を要することを理解させる必要がある.睡眠の重要性については本人だけでなく，家族，雇用者や学校の教師を含めた社会全体への啓蒙が必要不可欠である.