13が国における生体腎移植の環況と今後の方向

摘要

腎移植は末期腎不全の腎代替療法のうちもっとも優れた根治的治療であり，免疫抑制療法の進歩により飛躍的にその成績は向上した.わが国ではその成績において欧米諸国と遜色はないが，毎年症例数は増加しているものの献腎提供が極端に少ないため，ここ+数年間における症例数の推移は800?1,500例である.2010 年には1,484例の腎移植が実施されたが,そのうち生体腎移植が85%を占めている.生体腎移植では透析療法を経ないで腎移植実施する先行的腎移植が年々増加し，2010年には12%に増加している.また，最近の傾向として，生体腎移植の適応拡大の目的から夫婦間移植が35%, AB0血液型不適合移植が26%を占めるに至っている.移植までの待機期間は，生体腎移植では3.9±5.3年であるが，死体腎移植では17.1 ±7.2年と気の遠くなるような年数で，さらに遷延する傾向にある.この点からも，わが国では国家的に臓器提供推進プログラムを強力に推進しなければいけない.