IgA腎症の疫学-全国疫学調査と10年間の追跡研究の結果を踏まえて

摘要

IgA腎症の臨床像を明らかにするために，全国疫学調査（1995年）と10年間の前向きコホ一卜研究(1995?2005年）を行った.1994年のIgA腎症受療患者数は24.000人(95%信頼区間：21,000?27,000人）と推計された.学校や職場の健診により発見される無症候性の症例が多数を占めることが，わが国におけるIgA腎症の特徴のひとつであると考えられた.追跡開始時点からの10年腎生存率は85.0%(95%信頼区間：83.1~ 86.7%)であり，慢性透析療法導入の独立した危険因子は，男性，年齢30歳未満，腎不全の家族歴， 慢性腎炎の家族歴，高血圧，尿蛋白,軽度尿潜血(赤血球30/視野未満），低アルブミン血症, eGFR の低下，初回腎生検異常所見，であった.IgA腎症の早期発見を予後の改善によりょく結びつけるために， 予後予測と治療に関するェビデンスの蓄積が望まれる.