欧州における地球温暖化対策に関わる制度の動向と今後の展望

摘要

地球温暖化を引き起こす温暖化ガスは，その多くがエネルギー消費由来のものである．そのため，各国の温暖化ガス削減に向けた取り組みは，基本的にエネルギー政策に深く関係する内容となってくる．2度にわたる石油危機を契機として，エネルギー資源の有限性や石油価格の高騰に伴う経済的損失に対する対応が求められるようになり，各国ではそれぞれ省エネルギーや石油代替エネルギーの開発といった政策措置が実施されてきている．その上で，1990年代に入って温暖化ガス排出量の削減が求められるようになり，従来のエネルギー諸対策に対して追加的に地球温暖化対策が検討·実施されるようになってきている．そこでは，省エネルギーやより温暖化ガス排出量が少ない燃料への代替が進行することを目的として，市場を活用した政策措置や事業者の自主的な取り組み等を組み合わせつつ，各国の温暖化ガス排出量削減目標を達成すべく努力が払われているのである．そこで本稿では，主に欧州地域において1990年代以降に検討·実施されてきている地球温暖化対策について，市場を活用した制度（環境税，排出量取引）や京都メカニズムの活用，そして事業者の自主的取り組みといった制度に焦点をあてつつ概観し，その特徴と今後の方向性について取り纏めを行うことにする．