手書き漢字認識と眼球運動－倒立提示による検討

摘要

漢字を倒立提示して判読中の眼球運動を分析した．材料は，活字体と人の評価に従って分類された手書き良筆文字と悪筆文字であった，活字体＞良筆＞悪筆の順に判読正答率は低下し，判読時間と注視点数は増加した．概形特徴を手かがりとして考察すると，複雑で細かく非対称的な文字形に対して注視点数は増加するものの，文字の複雑性を示す画数と注視点数との相関は低いことが判明した．また，筆者らの提案した悪筆度合の定量的指標が増加するほど注視点数も増加する傾向がみられた．これは複雑さ以外の，歪みやねじれといった悪筆に寄与する特徴が注視点の増加を招いたと考えられる．