Cr，Mnを添加したAl-7％Mg合金の相分解挙動に及ぼす時効処理温度の影響

摘要

Al－Mg系合金の相分解挙動に及ぼすCr，Mn添加の影響を明らかにすることを目的として，実験を行った。 本研究では，析出状況，析出物の種類，析出量および析出速度に及ぼすCrやMn添加の影響に関して，時効温度の観点から具体的に検討を加えた。 その結果以卜の内容が明らかとなった。 （1）CrあるいはMnの添加と無関係に，480K以下の時効温度では棒状の準安定相が，490K以上の時効温度では粒状の安定相が形成される。（2）Kissinger法を用いて析出物が母相中に再固溶する際の活性化エネルギーを求めたところ，準安定相の再固溶に関連する活性化エネルギーは100～140kJ／mol，安定相の活性化エネルギーは160～180kJ／molであった。 また活性化エネルギーの測定結果からも，準安定相から安定相へと析出状況が変化する時効温度は490K付近であることを明らかにした。 （3）時効処理に対する電気比抵抗や吸熱反応量の変化から，CrやMnを添加すると特に低温時効の場合に，準安定相や安定相の析出量が減少することが明らかとなった。 また，CrやMn添加に伴う結晶粒の微細化や晶出物の形成により，時効初期段階における準安定相や安定相の析出は促進される。 （4）Al-Mg系合金に生じる準安定相や安定相の析出は，CrやMnの添加に伴い促進されるが，特に安定相の析出を助長する効果が大きい。本研究の実施に際し，試料の提供ならびに有益なご助言を頂きましたスカイアルミニウム（株）村松俊樹氏を初めとする関係各位の皆様に深甚なる謝意を申し添えます。 また，実験に協力された当時山梨大学学生吉田耕輔君および山梨大学大学院松本直大君に感謝致します。