アルミニウムアノード酸化ポーラス皮膜の孔発生過程に及ぼす素地結晶方位および表面トポグラフイの影響

摘要

AFMを用いてアノード酸化ポーラスアルミナの孔発生過程に及ぼすAl素地表面の凹凸構造の影響を定量的に検討した結果，以下の事実が明らかになった。 熱処理を施していないAl素地を電解研磨すると異方性を持つ縞状構造が現れるが，300℃で1時間熱処理を施したAl素地を電解研磨すると等方性のセル状構造が観察される。 熱処理を行っていない試料に加え，250℃までの比較的低い温度範囲で熱処理を行ったAl素地は(110)面が優先配向していた。 一方，300-500℃までの比較的高い温度範囲で熱処理を行ったAl素地は(100)面優先配向に変化することから，縞状構造は(110)配向に由来することが確認された。 電解研磨後のAl表面に，縞状構造あるいはセル状構造を持っ試料および平滑化処理した試料をそれぞれ定電流アノード酸化したときの孔発生過程の検討から，酸化皮膜の表面形態は電解前の素地表面のトポグラフイに強く依存することが示された。 しかし平滑化処理を施したAl試料においては，孔発生を誘導する素地表面の凹凸構造を持たないことから，他の条件では観察されない微細な孔が電解初期に多数発生した。 本研究の結果は同時に，皮膜の機械的特性や塗膜との密着性にも関連するアノード酸化皮膜の表面形態が，用いるAl素地の表面形態に強く依存することを明確に示した。