LPガスの政策的位置は向上したそれに業界総体はどう応えていくべきか

摘要

石油·電気·石炭·天然ガス等々，数あるエネルギーの中で，LPガスほどその重要性が再認識され評価が高まったエネルギーはないだろう。3.11大震災がその契機となったことはいうまでもない。エルピーガス振興センターが毎年全国8～9カ所で開催する「LPガス懇談会」があるが，その関東懇談会の席で気仙沼からやってきたデニム縫製工場の女性社長が調々と大震災·津波体験談を語ったのを忘れない。高台にポッンと取り残された真っ暗な工場でLPガスだけが機能したのだ。それで暖をとり，カップ麺を工場の従業員や避難してきた近所の人たちと分け合って食べた。「LPガスに命を救われた」と切々と語ったのだ。総合資源エネルギー調査会の有識者委員として著名な桶川武郎教授の言葉を借りれば「大震災下の人々の命と生活を守ったのは，自衛隊とLPガス」だった。分散型エネルギー·災害に強いエネルギーとしてのLPガスへの評価が高まったが，この背景にはLPガス業界総体を挙げての取組みがあったことはいうまでもない。サプライチェーンの強化，中核充填所の配備·設置，貯蔵タンクの強化のほか，海外からの安定供給の確保及び地政学リスクの低い地域からの輸入，地方自治体との「防災協定の締結」等々。こうした一連の取組みが，LPガス輸入価格の低下や地域社会への貢献へとつながった。これが評価されて「中間報告」に盛り込まれたのだ。中間報告へのLPガスの役割の明確な記述が，今後の役所のエネルギー政策·LPガス行政のベースとなる。「分散型で災害に強くクリーンなLPガス」，「災害時にはエネルギー供給のラスト·リゾート」という仏は作られていたが，それに今回魂が注ぎ込まれたといえよう。このことが，今後の備蓄軽減や需要開拓とそのための予算獲得のベースとなって，LPガス業界樟体の質の底上げとなっていくことだろう。