フッ素添加DLC膜の真空におけるトライボロジー特性

摘要

人工衛星などの宇宙機器には太陽電池パドル展開機構，アンテナポインティング装置，マニュピュレータなどのしゅう動部をもつ装置が搭載されている．宇宙空間で潤滑剤なくこれら金属材料を摩擦させると容易に固着し，直ちにミッションの停止を招く恐れがある．これを防ぐために，これら装置のしゅう動部にも地上の機械装置と同様に潤滑がなされている．宇宙空間は真空であるために地上で使われているオイルやグリースなどの潤滑剤は使えず，MoS_2が広く使われてきた．しかしMoS_2の潤滑処理作業は特殊で多くの工程を要し，装置のコスト高の要因となっている．また，MoS_2は大気中，特に高湿度雰囲気にさらされると摩擦特性が著しく低下してしまう．加えて，固体潤滑機構要素の寿命余裕をとる必要があり，機構部品の小型·軽量化が難しい．接触面における潤滑技術（摩擦制御，寿命の制御）は，将来の宇宙機器の鍵を握る技術であり，革新的な新技術の導入が不可欠である．