触媒雑感

摘要

昨年の3月で三菱化学での触媒RDの現場での仕事に一つの区切りをつけてタイヤリサーチマーテックに移り,引き続き触媒関連の調査等を行うことになった。振り返ってみると早いもので，触媒と係わりを持つようになってから30年が経った。 "固体触媒では世界的なレベルの研究をしているらしい"との噂を信じて，講座を決めるためのジャンケンに勝ち抜いて田部研にお世話になったのが触媒との出会いであった。 3年間田部研のメインテーマであった固体酸塩基触媒関連の研究を行った。 卒業後は三菱油化（現在の三菱化学）で主に酸化触媒の自社開発を担当し，ラボスケールでの触媒探索から，実プラントへの導入まで経験できたことは，触媒研究者として幸せだったと思う。 酸化エチレン触媒の開発では触媒学会の技術賞を受けることが出来て，とても光栄なことであった。触媒の工業化では,触媒の素性が優れていることは当然だが，粉化率，強度といった基本物性のしっかりしたものを安定に，かつ経済的に製造することが必要である。 そのための触媒の工業製造技術は,論文·特許として発表されることも少なく地味な仕事ではあるが，実用化に向けては重要な役割を担っていることを実感した。