衝撃負荷時の骨の挙動を基にした足部FEモデルの改良

摘要

自動車事故において，前面衝突時にシートベルトを着用していた運転席乗員の最大傷害部位(AIS≧2)の中で下肢は約27％を占めており，胸腹部に次いで傷害が多い箇所であると報告されている（図1）．下肢に傷害を負うと，歩行障害をきたす可能性があり，社会的な負荷も大きいと考えられる．特に足部は，下肢の中でも構造が複雑なために傷害の発生メカニズムに不明瞭な部分が多い．これまでには，足部の傷害メカニズムを明らかにするため人体の切断下肢を用いた衝撃実験がおこなわれてきた．近年は，有限要素法などの数値計算を用いた足部の傷害解析がなされている．北川らは，有限要素モデルを用いて足部の衝撃解析を実施し，衝撃負荷時に足部に作用する荷重値の比較結果と，骨の応力集中個所と試験体の骨折部位との比較結果を用いて，モデルの検証を実施した．Beillasらは，脛骨軸方向の静的な荷重を足底部に負荷する解析を実施し，荷重や変位を実験値と比較しモデルの検証を実施している．衝撃負荷時の傷害メカニズムを検討するためのモデルを作成するためには，荷重や変位の値を検証することも重要であるが，足部の個々の骨の動きが人体と同様に再現されていることを確認することが第一に重要と考える．そこで本研究では，シネラジオグラフイ（Ⅹ線連続撮影装置）を用いた切断下肢への衝撃実験から得られた足部の骨の動きを基に，足部のFEモデルの改良と検証をおこなった．