圧縮水素容器搭載自動車の火災安全性評価－ガソリンおよびCNG自動車との比較

摘要

現在，燃料電池自動車用の燃料としては，圧縮水素ガスが主流となっている．水素は軽く，大気中に放出された場合，浮力により上昇するとともに，分子拡散係数も大きいため，比較的逸散しやすいなどの特徴を持っている．一方，天然ガスやガソリンに比べて可燃範囲が広いこと，極めて低いエネルギで着火すること，火炎が非常に見えにくいなど，扱いには注意を要する面もある．また，空気との混合気でも爆ごうに至る特性もある．それゆえ，一般的には危険度の高い燃料として認識されている．水素を燃料とする自動車をユーザが安心して使用できるようにするためには，ガソリンや天然ガスなどの現用車と同程度，あるいはそれ以上の安全性を確保する必要がある．Swainらは，自車の燃料が漏洩し，引火した場合の安全性評価のため，水素とガソリンの場合について試験し，水素の場合，噴出火炎が形成されるがその持続時間は短く，大気中に浮遊する微粒子が燃えることで可視可能になり，ガソリン自動車に比べ，圧縮水素容器搭載自動車の火災が特に危険ではないことを報告している．田村らは，圧縮水素容器を搭載した自動車火災について4ケースの火災シナリオを想定した試験を実施し，安全装置（以下，「PRD」という）から放出された火炎や水素とガソリンとの融合火炎の規模，輻射熱，音などについて調査した．その結果，圧縮水素容器搭載車両の火災に関して新たな知見を得た．しかし，安全基準の策定に際しては，多くの試験データが必要であり，本研究では圧縮水素容器を燃料とする自動車および圧縮天然ガス(CNG)とガソリンを燃料とする自動車の火災試験を実施し，圧縮水素容器を燃料とする自動車の火災安全性について評価した．