ドイツ·オーストリアのものづくり中小企業の経営と基盤産業～金型技術振興財団「ドイツを中心とした金型関連企業の調査研究」から

摘要

本稿の目的は、ドイツ·オーストリアの素材形を中心としたものづくり中小企業の現状を分析し、その経営上の特徴と基盤産業の実態の一端を明らかにするものである。日本は先進国の中では米国に次ぐ人口大国であり、内需が非常に大きい。また、世界的な競争力を誇る大企業·完成品企業が数多く存在している。日本ではそうした大企業·完成品企業とサプライヤーとしてのものづくり中小企業の間の固定的取引関係から、いわゆるフルセット型の産業構造が形成されてきた。これらの理由から、ものづくり中小企業の多くは顧客としての国内大企業·完成品企業に経営·技術の両面を強く依拠することで、事業を継続·発展させてきた。しかし、新興諸国の経済成長や企業の海外生産展開から、日本における製造業の量産機能は長期的に縮小傾向にある。また、国内市場自体も人口減少の進展から縮小傾向にある。アジア企業の躍進により、国内大企業·完成品企業の相対的な国際地位の低下も顕著になっている。その結果、ものづくり中小企業の廃業数も年々増加しているのが現状である。よって、国内ものづくり中小企業の事業継続·発展のために、様々な国々の様々な企業の事例を調査することで、新たな経営モデルの提示が求められている。以上の問題意識を背景として、筆者は公益財団法人金型技術振興財団の支援を受け、2014年から2か年の計画で、ドイツ·オーストリアの金型を始めとするものづくり中小企業の経営実態の解明を目的として、現地調査を行った。