MTTRの短縮に向けたネットワークレベルのロールバック手法の提案

摘要

インターネットを中心としたネットワークは社会インフラとして，その役割は益々増大する．また，ネットワークの大規模化にともない，運用者によるオペレーションの機会は増加する．このため，全幅の信頼をよせて利用できるネットワークを実現するための運用管理手法の確立が重要となる．そこで本稿では，運用者による設定値の入力誤りなど，オペレーションの誤りによる障害を対象に，障害からの迅速な復旧を図り，MTTR（Mean 重meTbRepa叫の短縮を実現する，新たな運用管理手法を提案する．提案手法では，管理対象のネットワークを構成する機器の設定と，運用者によるオペレーションの内容を履歴管理する管理サーバを導入し，管理サーバがネットワークに存在する全ての機器の設定を障害発生以前の設定に切戻すことにより障害復旧を実現する．また，提案を通じ，迅速な復旧を目的とする3つの切戻し手順を与える．さらに，提案手法の有効性を評価するため，提案手法に基づくシステムを実装する．50台の仮想ルータからなる評価環境を構築し，3つの手順による切戻し時間をそれぞれ測定する．測定の結果，50台の仮想ルータを切戻すのに必要な時間は最短で40.8秒であった．これはルータ1台あたりの再起動時間より短く，提案手法がMTTR．の短縮に効果的であることを示す．