災害時の緊急車輌を用いた省電力モバイルアドホックネットワークにおけるルーティングプロトコルの提案

摘要

近年，大規模な災害が頻発している．地震などの大規模災害が発生すると基地局が失われ，インターネット通信が困難になる可能性がある．この状況に対処するために，基地局を使わないネットワークを構築する必要がある．そのため，MANET(Mobile AdHoc Network)と呼ばれる技術を用いることで通信困難を解消しようとする研究が多くなされている．MANET はモバイル端末同士をつなぎ，ネットワークを構成する仕組みである．これにより基地局を介すことなく宛先ノードへのパケット送信が可能である．しかし，MANET には多くの課題が存在する．MANET では，モバイル端末（以下モバイルノード）をつないでネットワークを構成しているため，個々のモバイルノードはルータの役割を担う必要があり，通常使っている状態よりも早く電力を消費する．そのため本稿では，緊急車輌（救急車や消防車などの特殊車輌）を用いたMANET の構成と，そのルーティングプロトコルを提案する．ここで，緊急車輌を用いる理由は２つある．第１の理由は，モバイルノードでは電池容量が極めて少ないが，緊急車輌では多くの電力を保有しているためである．第２の理由は，災害時には多くの緊急車輌を出動しているためである．