追尾情報を必要としない船舶目標の疑似SAR画像生成法

摘要

SAR (Synthetic Aperture Radar)のレーダ画像による船舶目標の観測を目的として，照合のための疑似レーダ画像を，候補目標の3次元形状データと電磁界理論に基づいて生成する方法について検討している．SARの画像は，目標の電波散乱強度分布を，レーダに対する目標の姿勢により定まるレンジ軸と，目標の運動により定まるクロスレンジ軸で構成される平面に投影したものである．そこで，疑似レーダ画像を生成する際は，レンジとクロスレンジの軸を推定する必要がある．従来は目標の航跡とレーダの位置関係からレンジ軸を推定し，さらに，航跡より定まる艦首の方向と観測されたレーダ画像上の船舶の像の傾きの関係に基づいてクロスレンジの軸を推定していた．しかし，この方法は，目標の航跡を知るために追尾を必要とする問題があった．本稿では，追尾を必要とすることなく船舶目標の疑似レーダ画像を生成する方法を提案する．この方法は，観測されたレーダ画像上の目標のレンジ幅に基づいて目標の航跡の候補を絞って候補画像を生成し，観測されたレーダ画像との相関に基づいてこれを絞り込む．計算機シミュレーションにより，観測画像との相関値が0.9以上の疑似レーダ画像を生成できることを確認した．