長唄における韻律的特徴のモデル化とその評価

摘要

情緒や雰囲気を重視する日本の伝統的歌唱法と，音の響きを重視する西洋的歌唱法「ベル·カント」では韻律的特徴に多くの違いが存在する．しかし，日本の歌唱法はベル·カントに比べてまだ研究例も少なく，音響的·生理的特徴に未知な部分が多い．本研究では日本の伝統的歌唱法「長唄」を対象とし，同一の歌い手と楽譜によるベル·カントとの比較から長唄特有の装飾音の韻律的特徴を分析し，この装飾音を新たに指令として導入した2次系の制御モデルを提案する．評価実験では，実際の長唄音声，モデルから生成した長唄的韻律遷移を用いて再合成した音声，実際の長唄から抽出した韻律遷移を用い再合成した音声などを比較し，提案モデルの妥当性を検証する．