集合住宅の音響性能に関する紛争への対応

摘要

集合住宅（住戸）の音響的品質に関する苦情·紛争は，単に技術的問題に限られることではなく，それ以外の要因が含まれていることも考え，その点への配慮が必要であることはいうまでもない。また，苦情初期の対応のまずさは，それが苦情の域にとどまらず建物に欠陥があるとして裁判にまで発展してしまうこともある。いずれにしても，この苦情の発生の原因の多くは，入居者が住まう住戸の音響性能に関する情報不足のために生じてしまったと言える。集合住宅に音響的問題があるとされるトラブルを解決していくためには，集合住宅は大型の商品の一つであって，他の多くの商品と同様にその商品の品質としての音響性能の程度（性能値）が，入居者によって問題視されているのだということを事業主（販売），設計者，施工者も共に認識し，理解しなければならない。その認識·理解があることによって，苦情を正当に理解し，適切な対応も可能になるといえる。その理解，認識のためのいくつかの要因について考えてみる。