プルサーマル-その意義と安全性II. MOX炉心の核特性

摘要

MOX燃料が装荷された炉心（MOX炉心）の核特性は，すでに軽水炉において膨大な使用実績があるウラン炉心と何が違うのであろうか。 まずそこから論じてみたい。 MOX燃料に含まれるプルトニウム（以下，Pu）は，使用済ウラン燃料の中に含まれているPuを再処理により取り出したものであり，軽水炉でのウラン燃料の燃焼に伴って生成されたPuである。 つまり，MOX燃料車のPuはもともとウラン燃料とともに炉心の中に存在していたものであり，言い方を変えれば，MOX燃料は今でもすべての軽水炉中に存在しているといっても過言ではない。 一般的にいって，使用済ウラン燃料には，重金属重量比で約1％程度のPuが存在しており，炉心から取り出す直前のウラン燃料における核分裂全体のうち，Puの核分裂が占める割合は，半分以上に達する。 ウラン燃料の炉内滞在中の全発生エネルギー量に対する割合でみても，約30％を占めており，これはすなわち，ウラン燃料を用いて発電しているとされる現在の原子力発電の総発電量の30％はすでにPuによってなされていることを意味している。 つまり，Puを軽水炉で燃焼させることは，軽水炉を利用し始めた当初より取り扱ってきた問題なのである。 では，軽水炉におけるMOX燃料利用の技術的課題の本質とは何なのか？ 　 それは，量的な違いである。 ウラン燃料だけの炉心に比べて，最初からPuが含まれるMOX燃料を装荷した炉心は，炉内のPu存在量が多いのである。