「安全神話」「安全·安心」とリスクコミュニケーションを考える

摘要

2011年3月11日の東日本大震災は，未曾有の被害を我が国にもたらしたが，中でも津波の破壊力にはすさまじいものがあった。土木工学を専門とするものにとって，今回の地震·津波の後のさまざまな構造物の惨状を目にして，強いショックとともに被害が大きかったことに心痛むばかりである。一方，引き続いて起こった福島第一原子力発電所の全電源喪失から爆発に至る事故は，これまで日本が経験してきた大規模自然災害とは全く異なる様相を呈することになり，日常では無縁と思われていた放射能問題を全国民に知らしめることとなった。「安全神話」が崩れたと大騒ぎになり，その後の何とも言えない国内の混乱が，エネルギー安全保障，日本と地域の復旧·復興に大きな影を落としたことは記憶に新しいところである。