重症心身障がい児者施設の全国的概況をふまえた生活実態の事例的研究－空間構成と生活様態に着目して

摘要

重症児者施設で暮らす居住者は，次第に症状が重くなり，施設全体では年を経るごとに医療ニーズが高まる状況にある．また現在住宅で暮らす重症児者についても，核家族化や保護者の高齢化などによって家族介護力の継続に不安を抱える事例は増しており，地域での受け皿が充分でないことも相まって，施設への入居を希望しながら待機状態である入居希望者数には一向に減少の兆しがない．障碍者自立支援法は障碍のある人たちを施設ではなく地域で支えていこうとする脱施設の考えを一つの背景に制定された法律である．そして，重症児者施設でも脱施設の思想が実現されることは望まれるものの，戦後に建てられた重症児者施設の建て替え時期を迎え，現実問題としてこうした施設の建築的あり方が問われなければならない．今後は，介護·看護から「生活」そのものへと建築空間の目的を転換した施設計画を考える必要があろう．