モルフォ蝶に学ぶ特異な構造発色体の開発

摘要

実は，構造色の魅力は工学的価値にある。まず経年の化学変化に影響される色素と違い，原理的に「色あせ」ない（構造がある限り半永久的）。また根本的に色素と異なり，目立つ光輝色を発する。そして色素不用ゆえに低環境負荷かつ省材料であり，さらに，外部光を高効率で利用するため，生物由来とあわせてグリーンテクノロジーの側面を持つ。本稿ではこうした前提に立ち，「モルフォ蝶の巧妙な構造色」を基にした新規な発色体の開発について，筆者らが行っている種々のアプローチの現状を紹介する。その流れはまさに本稿で特集される「自然界の生物に学ぶ」方向性と，現代ナノテクノロジーとの融合の一例と言える。