Cu-Fe磁気傾斜機能材料の作製方法ならびに磁気特性

摘要

著者らは、一体の材料でありながら性質のまったく異なる非磁性から強磁性へ連続的に変化する材料を作り出す可能性のあることを傾斜機能材料に見出した．その第一歩として明らかにしたのがCu-Fe合金におけるin-situ磁気傾斜機能材料に関する研究である。 傾斜機能材料は複合材料の一種であり、母相と強化相の濡れ性が重要な要素となる．すでに報告した磁気傾斜機能材料は、濡れ性を考慮する必要のないCu-Fe合金の中から2成分系の細成比に応じた強磁性を有するα-Fe粒子を晶出させるin-situ（合金中からの晶出粒子を利用する方法）な手法により作成した．すなわち、固溶体を形成するCu-Fe{sub}2元合金において強磁性を有するα-Fe粒子を冷却途中に晶出させ、非磁性を有するCu母相中に遠心力の影響を受けて比重差の違いから自発的に傾斜分布させる鋳造法である．この方法によって、飽和磁化を場所によって連続的に変化させることのできる磁気傾斜機能材料の発現を見たのである．しかしながら、上述の手法の場合Cu-Fe合金におけるFe濃度が多くなると晶出Fe粒子の粒度は球状から板状に変わるため、溶湯中を遠心力によって生み出される重力の影響を受けて移動することができなくなり、目的とする傾斜組織が得られなくなる．このことから、必然的に遠心鋳造時の原料となるCu-Fe合金のFe濃度が決まってしまい、Fe濃度に比例する飽和磁化の高い傾斜材料を得ることは難しくなる．