冷間ダイス鋼の熱処理変寸に及ぼす合金元素と組織の影響

摘要

一般的に、工具鋼での金型製造過程のうち、焼入れ焼戻し工程では、加熱·冷却過程での熱応力やマルテンサイト変態の発生時期の差を起因として熱処理歪み（変寸と変形）が発生する。 特に工具鋼の中で、冷間ダイス鋼JIS SKD 11や高速度工具鋼JIS SKH 51など粗大な晶出炭化物を多く含む材料では、非等方的な変寸挙動（変寸異方性）が顕著に認められる傾向にある。 稲垣らは、制御圧延鋼において、圧延温度により決定されたオーステナイトの集合組織の方位は、熱処理後にも強く残存することを報告しており、変寸異方性への影響が示唆される。 しかし、SKD11やSKH51などに多く含まれる晶出炭化物が変寸異方性に及ぼす影響については調べられていない。 そこで、冷間ダイス鋼のCとCr含有量を変化させ、成分および晶出炭化物量による変寸と変寸異方性への影響について調査した。